苧環(おだまき)は契をあらわす縁起物として知られています

糸を巻く道具の一つ苧環(おだまき)も縁起物として着物の柄などになっています。

苧環とは

苧環とは、四角い枠上の糸巻きのことです。糸巻きは、糸を巻きつける道具として、古来から世界各地で用いられてきました。

日本でも、糸巻きの歴史はとても古く、釣り糸や凧揚げの糸、楽器の糸などと使用する糸の用途により、さまざまな種類の糸巻きが作られてきたのですが、その中でも、布を織る際に用いる「苧環(おだまき)」とよばれる四角い枠状の糸巻きは、とくに古来より人々の間でたいへん身近な物でした。

昔から歌にも詠まれ和歌などでもその名をみることができます。
平安時代のはじめには、在原業平の書いた「伊勢物語」のなかに
古の しづのおだまき 繰りかへし 昔を今に
なすよしもがな(いにしえの しずのおだまき くりかえし むかしを
いまに なすよしもがな)
意味としては、昔の倭文織(しずおり)の糸を巻くおだまきを
繰(く)るように、再び繰り返して、昔の二人の
仲を今に繰り返す方法はないものだろうか。

注・・しづ=倭文。古代の織物の一種。
おだまき=苧環。しづを織る糸を中空にして丸く巻く機物。
よし=方法、手段。また、鎌倉時代には、源義経の愛妾だった静御膳が、義経の敵となった源頼朝の前で、
「しづやしづ賤のをだまき繰り返し 昔を今になすよしもがな」(しずやしず、しずのおだまきくりかえし むかしをいまになすよしもがな)あの有名な「しずやしずー」ですね。

-静や、静やと、苧環のように何度も繰り返し、名前を呼んで頂いたあの時へ、
苧環がくるりくるりと廻るように、くるりと戻るすべは、もうないのでしょうか。-
と義経を想い、詠ったと伝えられています。

苧環というのは糸巻きの道具ですから、糸の巻き方が乱れると機織りの際に絡まったりするので、巻き戻して糸の乱れを造作も無く直せたのです。
花の名前にもなっている苧環

ちなみに、山野で春に咲く苧環(おだまき)とよばれる美しくも可憐な花は、この糸巻きの苧環と形が似ていることから、その名前がつけられました。

契りに通じる縁起物
古代の日本では、糸巻き全般を千切(ちきり)とも呼んでました。
千切とは2つのものを結ぶという役目から、人と人との仲を結んだり、愛を交わす「契り」にも通じるというので、縁起が良いとされてきました。
そのため、糸巻きの文様は平安時代の頃より、吉祥の文様として用いられ、江戸時代には津田一族の家紋にも用いられてきました。
その文様の種類も多く、苧環の他にも、柄が付いていて凧揚げなどに用いられる枠糸巻き、重ね糸巻き、陰重ね糸巻き、また丸の中に糸巻を描いた丸に三つ重ね糸巻きなどがあります。
江戸時代の頃には、長い糸に長寿や子孫繁栄の願いを込めて、嫁入りの際には、糸巻き文様の着物や帯をもたせたといいます。
手仕事上達の縁起物
また、当時の女性にとって織物は重要な仕事で、糸巻きは大切な道具でしたから、そういったことで糸巻き文様には、手仕事が上手にできるようにとの願いも込められていました。

苧環にまつわる話

奈良の大神神社の神語りによりますと、「古事記」に大物主大神と活玉依姫(いくたまよりひめ)の恋物語が記されているとの事です。
美しい活玉依姫のもとに夜になるとたいそう麗しい若者が訪ねてきて、二人はたちまちに恋に落ち、どれほども経たないうちに姫は身ごもります。姫の両親は素性のわからない若者を不審に思い、若者が訪ねてきた時に赤土を床にまき、糸巻きの麻糸を針に通して若者の衣の裾に刺せと教えます。翌朝になると糸は鍵穴を出て、後に残っていた糸巻きは三勾(みわ)だけでした。さらに糸を辿ってゆくと三輪山にたどり着きました。これによって若者の正体が大物主大神であり、お腹の中の子が神の子と知るのです。この時に糸巻きが三巻き(三勾)残っていたことから、この地を美和(三輪)と名付けたということです。この物語は大神神社の初代の神主である意富多々泥古(おおたたねこ)の出自を述べるところで記されていますが、糸巻きのことを苧環(おだまき)とも呼び、糸をたよりに相手の正体を探るという説話は苧環型と言われて、類似した説話が全国各地に広がりをみせます。『古事記』のこの物語はその原型ともいえるでしょう。オオタタネコを祀る大直禰子神社の入口脇に、おだまき杉といわれる杉の古株が残っており、物語に登場する活玉依姫の苧環の糸がこの杉の下まで続いていたという伝説が残されています。

へそくりの語源にも

「臍繰り金(へそくりがね)」の略であるが、綜麻を繰って貯めたお金を意味する「綜麻繰り金(へそくりがね)」が原義となる。 「綜麻(へそ)」とは、紡いだ麻糸を環状に幾重にも巻きつけた糸巻きのことで、「苧環(おだまき)」とも呼ばれる。 「綜麻」と「臍(へそ)」が混同されたため、当て字で「臍繰り金」となった。
といいますから、蓄財の御利益もありそうです。

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